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弥生YouTube担当者に聞く「失敗、失敗、ちょっと成功…」で登録者数1万人にこぎつけた話

弥生はスモールビジネス事業者に寄り添う「事業コンシェルジュ」として、これまでさまざまな情報プラットフォームを活用しながら事業運営に役立つ情報を届けてきました。

2020年からは本格的にYouTubeの運用に乗り出し、動画を使った発信にも力を入れています。しかしそれまでオウンドメディアや会報誌などテキストベースでのコンテンツ発信がメインだった弥生にとって、動画制作はまさに未知への挑戦でした。

本格運用から2年半。当時300人程度だったチャンネル登録者数は、現在1万3千人を突破しています。そこにはお客様のニーズにお応えしながら、自らも進化を続ける弥生ならではのチャレンジがありました。

今回は2020年当初から今に至るまで、一貫してYouTube運用を担当する遠藤さんと上原さんにお話を聞きました。


ビジネス動画なんて見たことない…まさにゼロからの挑戦

BtoC企業での活用が目立つYouTubeで、順調に登録者数を拡大しているように見える弥生。そもそもYouTubeをマーケティングに活用しようというアイディアはどこから生まれたのでしょうか。

遠藤:事業部長から急に呼び出されまして、「YouTube面白いからやろうよ」という、鶴の一声で始まりました(笑)とはいえ、私も上原も動画制作どころか趣味程度にしかYouTubeに触れていなかったので、実際はかなり及び腰でしたね。普段、お笑い系のYouTubeとかしか見てない人間だったんで、まったく興味も自信もなかった。「はい、やってみます」と言いつつ、「めんどくせー」という表情が顔に出てしまっていた気がします(苦笑)

上原:私も当時ビジネス系の動画を見ようとは、これっぽっちも思いませんでした(笑)どういう動画にニーズがあり、よく再生されているのかも分かりませんでした。もちろん、動画マーケティングの知識はほぼ皆無の状態からのスタートでした。

遠藤:ただ、情報収集の手段として動画、というよりもYouTubeがもはや避けては通れないメディアであるということは世の中の流れを見ても明らかでした。弥生ではこれまで「スモビバ!」や「弥報online」などのオウンドメディアや、お客さま向けの会報誌「弥報Magazine」を運営してきましたが、それらはいずれもテキストコンテンツでした。

ただ、オウンドメディアも時代と共にその機能が変化し、例えばWebメディアでいうと、メディアそのものにファンが集まってくれるというよりも、ページ毎で検索ニーズを満たしていくというSEOコンテンツの格納倉庫というニュアンスが強まってきていて。もちろん、コンテンツマーケティングをする上でSEOはとても重要で、それらの取り組みは今現在でもすごく力を入れているのですが、新たにYouTubeを活用することで、再びスモールビジネスに関心のある方たちが集うコミュニティの役割を持たせられるかもしれないと感じて。

突然降って湧いた話ではありましたが、マーケティング観点でいえばYouTubeの可能性は大きく、2年前でもう遅すぎるくらいのタイミングではあったのですが、新しい挑戦としてぜひやってみたいと思えるようになりました。

かくして新たに動画マーケティングへの挑戦が幕を開けたわけですが、当時はどういったゴールを設定したのでしょうか。

遠藤:最終的には、お客様に弥生を認知してもらって製品購入=新規獲得につなげたり、お客さまにずっと弥生製品を使い続けてもらう=顧客維持というようなマーケティング貢献がゴールになります。ただ、「じゃあ今月は何件コンバージョンさせる」みたいな目標をいきなり置いてもあまり意味がないんじゃないかと。最初からそれをやるとチャンネルが拡大していかないのではないかと思いまして。

なので、直接的なマーケティング貢献はひとまず置いて、とにかく「スモールビジネス事業者の方たちが集まってくれる土壌作り」というのを目標に、それには何をすべきか、どう運営していくか、どう予算を配分していくか、ということを優先的に考えました。

上原:また、弥生はビジョン(ありたい姿)として “事業コンシェルジュ”を掲げています。これは単に製品を提供するだけでなく、事業者を取り巻くあらゆる悩みに応えることで「事業を継続・成長させたい」という顧客の本質的なニーズに貢献することを目指すものです。YouTubeでもこれまでオウンドメディアで実践してきたように、まずはスモールビジネス事業者に対して広く役立つコンテンツを発信していくことが重要なんじゃないかと。
ただ、動画とテキストでは閲覧側の情報取得方法が大きく異なります。テキストコンテンツであれば必要なポイントだけ“つまみ食い”できますが、動画の場合なかなかそうはいきません。いかに視聴を維持・完了してもらえるかがコンテンツの閲覧数に直結しますし、視聴者への提供価値となります。

いかに途中で離脱されにくい「役立つ」「見て楽しい」動画にできるかを重視して制作をスタートしました。そのスタンスは今も変わりません。

魅力的で有用なコンテンツを目指し、視聴者目線で試行錯誤

YouTubeでは視聴者からの評価が「再生回数」や「高評価・低評価」といった数字で如実に可視化されます。動画制作に知見がない中で、いかにして視聴者に受け入れられるコンテンツを企画し、生み出していったのでしょうか。

上原:まずはとにかく関連するジャンルの動画を視聴して、情報をインプットするところから始めました。掛け合いで進行する対談動画や、誰かが特定のテーマを解説する学習動画など、さまざまな動画のスタイルがあることを知り、弥生の場合はどういうスタイルがマッチするかを検討していきましたね。

遠藤:ただ、「これだ」というスタイルにたどり着くまでの道のりは決して楽ではありませんでした。例えば初期のころに制作した紙芝居風のアニメ動画がありまして。当時流行っていた表現手法だったので採り入れてみたのですが、全くうまくいきませんでした。

その理由は、展開に時間がかかりすぎること。最後まで見れば一つのストーリーが理解できるのですが、そもそもどんな内容なのかわからないものはYouTubeではクリックされない。仮に視聴してくれたとしても、端的に要点を理解したいというニーズにはマッチせず、離脱する視聴者が多いという結果に。制作工数やコストの面でも続けるべきではないと判断して、ソッコーでやめました(笑)

上原:また、最初のころは、事業者のお悩みに対して専門家がアドバイスする「スモールビジネスお悩み相談ラジオ」というのもやっていて。これは今でも内容としてはすごく役立つとは思うのですが、軌道には乗りませんでした当時は音声だけの動画が少し流行っていて、ファンマーケティングと相性が良いといわれたりしていたのですが、、まだまだ登録者数が少ない弥生のアカウントでは思うように再生回数が伸びませんでした。毎回楽しみにしてくれる人をちょっとずつ増やしていく、という戦略は間違ってはいないとは思うものの、メディア成長につながりそうなスピード感が足りなかった。

左:紙芝居風のアニメ動画 起業おとぎ話
右:スモールビジネスお悩み相談ラジオ

遠藤:で、そうした挫折が続く中で転機をもたらしたのが、個人的に視聴するようになったYouTubeのゴルフ動画でした。40代になってから今さらなのですが、コロナ禍でゴルフにハマりまして(笑)一「ドライバーの打ち方」とか「新作アイアン試打レビュー」みたいな動画をむさぼるように見るようになったんですが、イチ視聴者として動画を検索したり、おすすめをクリックしたり、離脱したり、スキップしたり、チャンネル登録したり、という自分のYouTube内での行動で、視聴者のニーズに対する解像度が高まったんです。それに気づいてからは、自分はどういう時に離脱しているか、などをメモするようにしたりして。どういった動画ならYouTubeで好まれるのか、違和感がないかが肌感覚で少しずつ理解できるようになりました。

そうした学びが上手く活かせるようになった例として、運用当初から今も続いているコンテンツのひとつなのですが、税理士の先生に会計や税金について解説してもらう動画があります。当初は社内の会議室に先生をお招きして、何人ものスタッフを集めて撮影していたんですが、それだとどうしてもセミナーのような硬い雰囲気になってしまう。ビジネス動画とはいえ、YouTubeのトーンとは乖離があるなと感じて。

そこで先生と相談して、自宅でのスマホ撮影に切り替えてもらいました。話し方もなるべく早口でお願いします、と。すると適度に砕けた雰囲気と親しみやすさが感じられる、良い意味での「YouTubeっぽい」動画になりました。その効果はデータにも現れ、視聴維持率や視聴後のチャンネル登録者数などで明確に数字を向上させることができました。

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セミナーを彷彿とさせる殺風景な雰囲気が激変

その後も、コンサルティング会社にも入っていただくようになり、どこで離脱してしまうか、どういうテーマだとチャンネル登録につながるか、など細かく数値レポートをいただくなどして、見た目の部分でも、内部的な数値の面でも、どんどん改善できるようになっていったかなと思います。

上原:当初はどうしても制作側の都合でコンテンツを捉えがちでした。それが視聴者にとってどうすれば見やすいかを考えられるようになったのは、その後のチャンネルの成長にとっても大きなターニングポイントになりました。

制作現場ではPCでの閲覧が多いが、視聴者はスマホからの視聴が大半。小さい画面でも一目で内容がわかるようこだわったサムネイル

ニーズに応じたチャンネル分割で登録者数が加速度的に増加

さまざまな試行錯誤を経て成長してきた弥生のYouTubeチャンネル。実は2022年3月には2つ目のチャンネル「個人事業主チャンネルby弥生」を立ち上げています。その背景についても伺いました。

上原:メインチャンネルのサブチャンネルとして「個人事業主チャンネルby弥生」を作成しました。それまでメインチャンネルでは視聴対象者をスモールビジネス事業者と想定していました。しかし、そこには同じスモールビジネスでも「法人」向けと「個人事業主」向けの動画が入り混じっていました。

仮に個人事業主の方が動画を気に入ってチャンネル登録してくれたとして、次に流れてきた動画が法人向けの内容だったら「自分向けではない」と感じてしまい離脱してしまうのではないか。そうした事態を防ぐためメインチャンネルは法人向けにシフトし、個人事業主向けに新たに「個人事業主チャンネル」を立ち上げることで、視聴者層を切り分ける決断をしました。

その結果、若干鈍化していたチャンネル登録者数が目に見えて増加し、メインチャンネルで1万人を突破。新規に立ち上げた個人事業主チャンネルは開設から1年で現在7,000人弱の登録者を獲得するまでになりました。これも、より自身にカスタマイズされたコンテンツが見たいという視聴者のニーズを満たせた結果だと感じています。

個人事業主チャンネル、登録者数は7000人に迫る

遠藤:そして実は昨年5月にもう一つ、これから起業を目指す潜在層をターゲットにした「挑戦者チャンネル」を立ち上げました。経営者へのインタビューを通して、これから起業したい人の後押しになるようなコンテンツを目指しています。こちらも今まさに試行錯誤を繰り返している途中、というよりも大苦戦しています(笑)。ただ、「起業したい」というマインドを動かすのって、絶対にテキストよりもYouTubeのほうが向いている気がしていて。それをなんとかして挑戦者chで達成したいのですが。本当に難しい。

上原:一歩先を行くロールモデルの葛藤や苦難、そして挑戦への熱い想いを動画でドラマチックに描くことで、視聴者が一歩を踏み出す勇気を得られるー。そんなコンテンツを目指して、企画を練っています。

挑戦者チャンネル by 弥生

さらなる動画コンテンツ活用でより多くの課題解決へ、新たな挑戦

これまでお役立ちコンテンツの発信によって、主に潜在顧客層の悩みや課題に寄り添ってきた弥生のYouTubeチャンネル。チャンネルの成長と共に、新たな役割が期待されるようになってきているといいます。

上原:登録者数の拡大に伴って、社内においてもYouTubeチャンネルの新たな活用方法が模索され始めています。その一つが、カスタマーセンターとの連携です。

先ほども触れた通り、当初YouTubeの目的は広く潜在顧客層を狙った「人が集まる場づくり」でした。そんな中、日々顧客対応を担うカスタマーセンターのメンバーから、お客さまへの製品紹介や操作説明にYouTube動画を活用できないかという相談を受けたんです。

そこでチャンネル内に「操作方法」の再生リストを新たに作成しました。製品の使い方を説明した既存のHowto動画をYouTube向けに一部再編集し、顧客向けに格納することにしました。これにより顧客は問い合わせの手間を省け、24時間いつでも疑問を解決できるようになったことで利便性も向上。同時に社内としても問い合わせ対応に割いていたリソースを削減でき、業務の効率化にも繋がりました。
この他にも商談や展示会といったオフラインでの動画活用など、さまざまな部署から相談が寄せられるようになりました。

遠藤:また、今後は規模を大きくできたこともあり、ようやく直接的なマーケティング活用にもつなげることができる、つなげていかなくてはと考えています。これまでのような潜在層中心ではなく、顕在層に向けてどうやって製品購入やサービス利用につなげてもらうか、どのように顧客維持に貢献できるか、も課題です。チャンネル開始当初にはあえて置かなかった「じゃあ、今月は何件コンバージョンにつながるか」が今後はしっかりと目標として追えるような状態まで来られたので、ここからが弥生のYouTube戦略の本番なんじゃないかな、と。

視聴者が何を求めているかを理解し、どうすれば見たい・見やすい動画になるかを常に意識してチャンネルを作り上げているお二人。最後にこれからについてお話を聞きました。

上原:会計や税務などの知識は専門性が高く、また法令改正などもあり変化が大きい分野でもあります。視聴者自身もまだ知らない・気づいていないニーズを先回りしてキャッチアップし、どういう動画なら役に立つか頭を悩ませている時間が、純粋にとても楽しいと感じています。

これからも視聴者の役に立ち、楽しんでもらえるコンテンツを、自分自身も楽しみながら企画していきたいですね。

遠藤:これまでの取り組みで良かったのは、二人とも全然YouTubeのことをわかっていなくて、それゆえに失敗しても切り替えがスピーディーだったことですね。ダメだったものはドライに辞めて、良いと思ったものは失敗を恐れずにチャレンジしてみる。良し悪しの判断として数値データをしっかり見てきたこともよかった。失敗、失敗、ちょっと成功、を繰り返して、少しずつメディアを成長させてきました。

チャンネル登録者数1万人はまだまだ通過点だと思っています。YouTubeとしては成功といえるような数字ではない。でも、よく考えると1万人ってすごいですよね。僕らが試行錯誤しながら制作した動画に、1万人以上の方が、軽い気持ちかもしれないけど「良いな」「次も見たい」と思ってくれたというのはすごいこと。最初はまったく乗り気じゃなかったのに、今では運営しているのが楽しい。2年前に「YouTube面白いからやろうよ」と言ってくれた事業部長にも今では感謝です(笑)。今後もより多くのスモールビジネス事業者のお役に立てるよう、挑戦を続けていきます


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