新たな価値創造が未来の弥生を変える
2023年7月に新設された経営企画本部は、弥生株式会社の新しい価値創造をリードし、新規事業への投資や、他社との協業を促進する重要な役割を担っています。設立から1年、経営企画本部の指揮を執る渡邉に、弥生で働く意義と今後の新規事業戦略について聞きました。
新しい弥生なら、社会貢献への意義ある活動ができると感じた
ー 弥生に入社した経緯を教えてください。
私は今まで、バランスシート(BS)で言うところの借方(資産)を活用しての事業投資から様々な事業を創出し、PL(損益計算書)での売上・利益拡大につなげるいわゆる事業開発側の業務と、様々な企業の貸方の純資産領域へ資本参加検討や実行をする側の出資業務の両面において、BSの右と左を行ったり来たりするようなキャリアを歩んできました。
ここ数年、貸方である右側の出資業務が長く続いていたことから、今後のキャリアを考える中で、再び借方である左側の事業開発投資や企業経営全体の方に自分のキャリアの軸を置こうかなと考えていたんです。そんな中、お話しする機会をいただいたのが弥生でした。
ー 今後の自身のキャリアを決められた時、どんなところが弥生とマッチしましたか。
弥生という名前は会計ソフトの有名な会社として以前から知っていました。ただ正直なところ、新しい取組み等に積極的な印象は当初はあまり持っていなかったんですよね。それは、既存の事業がしっかり出来上がっているということで、一概に悪いことではないのですが、私は新規事業関連のアライアンス業務の経験が多く、その経験が弥生で活かせる領域があるのか分からないところがあったんですね。しかし何度か弥生の経営層と話す中で、弥生が第二創業的に、コア領域の会計・給与・商取引の周辺事業開発にも今後力を入れていこうとしていることを知り、興味が徐々に高まりました。
弥生は高い企業イメージと信頼感があり、多くの顧客をはじめとするステークホルダーの強いネットワークを持っています。これらを活用すれば、社会に貢献できる意義ある活動ができると感じたんです。そんなこともあり最終的に弥生に入社することに決めました。
またこれは余談になりますが、面接中に経営陣が互いに意見を言い合うという場面があって…。
ー 面接中に面接官が言い合いを始めたんですか…?
意見が合わなくて話を始めたと言うよりも、自分の意見をすり合わせるという感じでしょうか。風通しの良さが伺えるような感じでしたね。あれ?これって私の面接だけどな、と思ったんですけど(笑)、経営陣がしっかり意見を言い合える環境なんだなというところが、とても良い印象を受けたのを覚えています。
新規事業を推進していく
ー 現在の渡邉さんのミッションについて改めて教えていただけますか。
はい、経営企画本部を管掌していて、結構幅広いミッションがありまして入社前の想定よりもミッションが増えています(笑)
まずは全体の経営方針を株主や経営陣と活発に議論しながら決めていき、それらを踏まえた組織設計の検討も行っています。また、政策渉外業務としてデジタルインボイスなどの新しい動きに関連する業界団体や関係省庁、政府との対応やコミュニケーションも行っています。
そして、新規事業開発、出資やM&Aなどの検討もミッションとして持っています。
ー 経営企画という組織は、一般的に財務管理や株主対応、新規事業開発、政策渉外など多岐にわたる役割を担っていると思いますが、現在、弥生の経営企画はその中でも新規事業開発の比重が大きいように思います。
そうですね。そこは今後バランスとタイミングを見ながら比重を変えていくことを考えています。私が入社したころ丁度新たなクラウドサービスである「弥生Next」の動きが活性化していて、コア領域のためのチームも新たに組成されはじめ、一定の方向性が動き出しつつありました。ですので、まずはそれに合わせて周辺の新規事業開発や新たな資本政策の動きを推進していった形です。
新規事業としてはあまり細かいことは現段階では申し上げられませんが、中長期的な事業領域や弥生のコアプロダクトの周辺領域などを含めて様々な領域を検討しています。ただ、新しい事業を立ち上げた場合、経営企画本部で事業をずっと持ち続けるのは適切ではないと考えているので、インキュベーションを行い、安定稼働や体制として整ってきたら関連する他の事業部に移すか、部隊として独立させるということを考えていきたいと思っています。最初の戦略や骨組みを作り、事業を開始させ体制や事業が順調に動き始めたら巣立たせる、という感じでしょうか。
ー 弥生が新規事業を行う意義について教えていただけますか。
現在のプロダクトのコア業務である会計・給与・商取引の領域だけでなく、その周辺領域でもコア領域とも連携しつつお客様の経営や事業運営をサポートできる可能性があると考えています。例えば、経費精算や勤怠管理、資金やキャッシュフローをサポートするFinTechサービスなどが挙げられます。これらの領域で新しい事業の柱を立ち上げ、コア領域ともスムースにデータや顧客体験を繋げていくことによって、お客様のバックオフィス業務の負荷を減らしていくということが、非常に重要になるかなと思います。
実際今年に入って、FinTech領域ではお客様の資金繰りやキャッシュフローを支援できるサービスを幾つか開始してきまして、順調なスタートがきれています。また、経費精算サービスでもAI機能にて自動的に勘定科目予測ができる先進的なサービスを提携パートナーと資本業務提携にて実現し、お客様の負荷軽減に貢献していきたいと考えています。
8月にはHR領域にて先進的な強い事業を展開している株式会社エフアンドエムへも出資をし資本業務提携を行いました。労務領域での共同でのサービス提供や、彼らのHR領域のノウハウを活用した新たなサービス開発など多方面にわたって連携を検討し、弥生のお客様にもエフアンドエムのお客様にも良い機能を提供できるよう検討を推進していきます。
現在、帝国データバンクの調査によると企業の倒産率は5年連続で上昇しているそうです。ということは、日本の99.7%を占める中小企業の倒産率も当然上昇していると考えられます。
日本の活性化には中小企業の生産性や事業性を高めることが必須だと思いますので、弥生が会計・給与・商取引のサービスに加え、周辺サービスも含めてお客様の伴走者としてサポートし、広くバックオフィス業務の負荷を軽減する。そして、中小企業が事業拡大や収益向上に必要なフロントサイドの生産活動や営業活動にしっかりリソースを割り当て集中できる環境を実現するというところをこだわりにして、新規事業を進めていけると良いと思いますね。
ー 新規事業というところでもう一つお伺いしたいのですが、弥生には色々なアセットがあります。このアセットを活用して弥生の新たな価値をつくっていくというのも新規事業に期待されていることでしょうか。
そうですね。弥生は今100万を超える有償ユーザーを抱えており、このデータベースはとても有力なアセットだと思っています。しかし、まだ十分に活用されていない現状があり、今後整備や検討を含めしっかり進めて行く必要があります。
ちょっと踏み込んだご提案になりますが、お客様の財務情報を分析し、例えば類似する統計的な他社情報と比べて人件費率や原価率が高い傾向にあるので改善を提案する、適しそうな業務提携先の候補を提案する、というような、お客様の状況をリアルに分析・可視化することで、お客様のニーズを先読みして、状況に応じたサービスの提案やサポートさせていただくことはできるのではないかと。
どうすればお客様の売上、利益を向上できるか、経営改善に資するようなサポートをさせていただけるのかを考えていきたいと思っています。
事業の幅を広げていくというところと、その中でいかに深みを持たせるか。単純に事業を広げていくだけじゃなくて、その中でどこをどうすれば、お客様のためになるのかというところをしっかりご提案していくというところに成長余地があると思います。
ー やはり、お客様の為に何ができるかという思いが新規事業に繋がるわけですね。
そうですね。例えば、会計ソフトを毎日使っているからといって、そこに単純に無関係な広告を出し続けたり、メールを大量に送るだけではお客様は興味を持ってくれなくて、必ずしも効果的なコンバージョンにつながるわけではないんですよね。むしろお客様にとってのサービスの価値を損なう恐れもあります。お客様との長期的な信頼関係を築いたりビジネス成長に繋げるためには、弥生の持つデータを効果的に分析して、お客様が本当に求めているものを求めているタイミングで上手く提案できるようにしていくことが今後大切になってくると思います。
経営企画本部で働く面白さ
ー 経営企画本部は個性的で面白いメンバーが多く、とても活気を感じます。経営企画本部で働く面白さについて教えていただけますか。
経営企画本部は横断で事業全体が見えるので、幅広く色々なことができるし、面白い経験ができると思いますね。経営企画本部の中でも特に事業開発と投資開発は関連が強く、両方の経験を同時に積むことも可能になります。元々投資開発で採用した方がいるんですが、事業を作るところもやってみたいという意向があり、実際に事業を作るところから、更に広げて経営企画業務まで幅広く担当してもらったりもしています。
また、経営戦略として新たな領域の事業開発を進める際に、スピード感やノウハウ・アセット獲得が必要なときはM&Aなどの資本政策も検討しつつ進めることができるなど、多角的に様々な手法を用いて事業開発を推進することができます。
具体的には、自社で事業を作っていくのか、他社と提携してOEM提供等していただくのか、あるいは出資やM&Aで取り込むのか、ジョイントベンチャーを作るのか、など様々な選択肢を同時並行的に考えていくことが可能になります。
またM&Aを行った場合の統合プロセス(PMI)で、株主の立場でその会社の価値を高めていく活動や、M&A先の企業の内部に出向や役員で入って、一緒に戦略策定から事業開発、実行、グロースまで一連の経験も可能になると思います。
ー 色々なことができる一方で、新しい取組みを始めるには課題もあると思います。渡邉さんが感じる課題とは何でしょうか。
先程申し上げたようにお客様に適切に様々なソリューションを提案していくには、データを適切に取得・管理し、活用できるようにしていくことが重要になります。確かに弥生が保持する大量の会計等のデータは我々ににとっての宝の元ではありますが、まだまだ使い切れていない状態かと思っていまして、その意味ではまだ宝になりきれていない状態だと思います。
また弥生には長年にわたり提供してきた会計・給与・商取引という確固たるサービス基盤があり、勿論これらはこれらで今後も重要な基盤として維持発展させていく必要がありますが、一方でそこに頼ってばかりで、これまでは新しいチャレンジの優先度は高くなりにくい環境にあったのかなと感じる時がありました。そのために我々は取り得たビジネスチャンスを逃してきたかもしれないし、お客様に対して提供できたはずの価値が提供できてこなかった可能性もあったというのは、正直課題だと思っています。
今後は、様々な領域でのチャレンジを強化し、加速していきたいと考えていますし、その環境が整ってきたと思います。最近特に魅力的なバックグラウンドを持った新たな仲間も増えていまして、新しいアイデアや企画を持つ方々とも協力して、お客様の課題解決に繋がる面白い企画をどんどん実現していきたいですね。
ー 今後、弥生が作り出す未来というのはどんなものになるのでしょうか。
私は、これまでNTTドコモのiモード部隊やLINEにて事業開発や出資の責任者してモバイルインターネットの発展や変遷を体験してきました。またベンチャーキャピタル業界にも長く在籍してまして出資という形で数多くの優秀なベンチャー企業の成長を目の当たりにしてきました。その中で、それらに代表されるテクノロジーの進化により世の中の産業構造が大きく便利な方向性へ発展・変化するのを、幸いにもまさに渦中で体験してくることができました。
そして今、弥生もまさに同じような立場にいるんじゃないかと思っています。
弥生が、バックオフィス業務を自動化することで、中小企業の皆様が本業に集中する時間を増やし、企業全体そして産業全体の生産性を高める。そこでもたらされる進化が、新しい経営スタイルを生み出す。
世の中で日本を元気にできる一番近いところにいるのが弥生だと思っていますし、そのような世界感の実現を我々は使命感と覚悟を持って本気で取り組まなければいけないと思っています。
編集後記
経営企画本部設立から1年余り、現在本部の社員は22名となり、メンバーが活き活きと働く活気のある本部に成長しました。
また、FinTech領域でのサービス提供の開始や、株式会社エフアンドエムとの資本業務提携など、着実に成果が積みあがっています。
普段から渡邉さんは、組織とは関係なくフレンドリーに社員と接していて、経営企画本部の自由な雰囲気を作り出しているのは、渡邉さんのお人柄なのだなと感じます。
今後経営企画本部が推進していく弥生の未来に是非ご期待いただければと思います。