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サラリーマンに戻れなかった男は、いかにして主体的選択のできる環境をつくったのか

弥生に入社する以前はコンサルティングファーム、電池の製造メーカー、そして起業と、さまざまな世界を経験してきた望月。そんな彼が培ってきたスキルやマインドは、現在の仕事にどんな影響を与えているのでしょうか。20年間の歩みを語ります。

コンサル、メーカー、起業──たどり着いた答えは

弥生のマーケティング部ビジネス戦略チームでシニアマネジャーを務める望月は、早稲田理工学部在籍中から、経営に直結する仕事がしたいと考えていました。

望月 「学生時代はインターンとして、統計学の研究所で1年間働きました。PCを前に1日中数式を見つめている仕事でした。あまり性に合わないのではないか、と疑問に感じるようになりました。

いつしか技術の一端を担うのではなく、業務全般を見通せるような仕事、経営に関われる仕事がしたいと考えるようになり、就活もコンサルティングファーム一本に絞ることに決めたんです」

自分の裁量を持ってビジネスを進めていきたい。リスクを覚悟で能動的に動き、いずれはトップに立ち、まだ世の中にないような新しいものを生み出していきたい。そんな想いとともにコンサル会社へ飛び込んだ望月は、トータルで10年間、この業界に携わることになります。

望月 「コンサルティングファームではクライアントの事業計画の考案や、業務改革を中心に業務を行ってきました。正直かなり大変なことも多かったです。企業のやり方を否定してイチから提案することは簡単ですが、そこには歴史や必然性がある。

そして当然、関わる従業員の気持ちもあります。初めの頃は、古株社員の方に怒鳴られることもありました。でも、そういった難しい相手をいかに説得して新しいプロセスを進めていくかを考えることが、僕には楽しい仕事でもあったんです」

社内のキーマンを見極め、飲み会や趣味の麻雀を通して人間関係を築いていく。同時に、業務効率化の提案一本槍ではなく、現場がそれなりにうまく回っている場合も、なぜ経営側に問題意識が生じているのかを探っていく。その上で、新しい改革を行うことでどんなビジネス上のメリットが生じるのかを言語化する。そんなところに望月はコンサルの醍醐味を感じていました。しかし30歳を過ぎたころ、徐々に行き詰まるような感覚に陥って行きます。

望月 「コンサルの仕事って、属人的な部分が大きいんです。もちろんプロジェクトの方法論や戦略の分析手法などの自社で持つアセットはありますが、基本的には人でビジネスをする。
もちろんそれがおもしろみでもあるんですが、モノをつくる上でのしくみづくりとか、他の企業との関係構築みたいなところにも徐々に興味を持つようになったんですね」

そうして望月は、32歳で電池のメーカーに転職。経営企画と営業企画を兼務するマネージャーとして登用されました。営業職の管理を行うかたわら、自ら数百万円する産業用電池を顧客に提案するなど、コンサル時代にはほとんど触れてこなかった現場の業務に触れ、やりがいを感じるようになっていきました。

望月 「人生で一番勉強したのがこの頃ですね。コンサルティングファームにいたころは、短期間の付け焼き刃でもなんとかやり遂げられてしまう仕事も多かったんですが、メーカーとなると自社製品について熟知していなくてはいけない。たとえば純粋なエンジニアのようにスペックだけを説明するのではなく、そのスペックがマーケットにどんなバリューを生めるのかを、自分の言葉で語れなくてはならない。それこそがまさに経営企画・営業企画の仕事の肝で、習得するまでの2カ月くらいは地獄だったと記憶しています(苦笑)」

3年間の事業会社勤務を経た望月ですが、そこから起業に向けて動き始めます。

電池のメーカーに転職したのも、実は将来の起業を見据えた際に、再生可能エネルギー業界に伸びしろを感じていたからだったのです。

望月 「長年の野望をかなえるべく、2014年、商社出身の知人・同僚と一緒に会社を立ち上げました。太陽光パネルやモバイルバッテリーの卸売や機器の使用選定など、エネルギー関係のコンサルと商社を合わせたような会社でした。
学生のころから夢だった経営というものに初めて自ら携わったのがこの時です。社内管理業務、資金調達、メディアリレーションなど、ひたすら自分の足で動き回りました」

1年目は順調にいったビジネスでしたが、人員を増やし過ぎたこと、きちんとしたストックビジネスをつくれなかったことなどもあり、売り上げが低迷。2年で終止符を打つことになりました。次にどんな道を進むのか──考えた末に望月が出した答えは、「自分が立ち上げたような中小企業に対して価値を提供したい」、そしてもうひとつが「サラリーマンには戻らない」というものでした。

望月 「経営を経験したこともあって、もうサラリーマンはやりたくないな、という気持ちが大きかったですね。ただ、サラリーマンの形態をした人すべてがサラリーマンではないと私は思っていて。
会社員だとしても、言われたことをそのままこなすのではなく、独立に近い形でどんどんビジネスを生み出している人間、主体的選択のできる“ビジネスオーガナイザー”のような存在になりたい、と思ったんです」


mochizuki_2012_コンサル時代_新婚旅行

数十万の顧客にバリューを提供したい、その一心で弥生へジョイン

再び転職に向けて動き出した望月は、自分のバリューについてこう分析していました。

望月 「コンサルティングファーム、メーカー、起業経験。この3つをうまく掛け合わせられることが武器だと考えていました。もちろん今でもそれが強みだと思っています。
コンサルではプロジェクトマネジメントの能力を、メーカーでは自社製品に対する営業企画力を磨きました。そして起業経験を通して、いわゆる中小企業が実際にどんな課題にぶつかるのかを肌で感じたことは大きかったですね」

そして2016年、望月は弥生と出会います。望月にとって、もっとも魅力的に感じられたのが、弥生の持つ膨大な顧客数でした。

望月 「現在は65万(※)、入社当時もすでに50万を超えた事業者を顧客として抱えていたんですよね。中小のミドルレンジ以下のマーケットで、BtoC商材以外にここまでの顧客を抱えている企業はなかなかないと感じました。
もしここでビジネスができれば、数十万人のお客様にインパクトを与え、バリューが提供できる。そう考えると胸が躍りました」

※「デスクトップアプリケーション、クラウドアプリケーションの有償保守加入数 2019年9月末現在」

こうして弥生にジョインした望月が初めに担当したのが、会計系マーケティングに関係する新事業でした。

まず、中小企業の大きな課題である資金調達に関して、融資に限定せず補助金・助成金といった中小企業独自では調べにくい手段の提供をビジネスパートナーと推進。それと同時に新しいオンラインサービスの構想フェーズに参画。ユーザーに広くヒアリングを行い、融資ビジネスの実情を探る仕事を担当していました

望月 「1年目は、全般的な資金ソリューションに関する仕事を担当しました。新しいオンラインサービスの立ち上げに関しては、黎明期のマーケット事業に携わることになったので、まだ50万を超える顧客にリーチしているという実感は得られなかったですね。
もともと膨大な顧客数に魅力を感じてジョインしたので、若干の物足りなさを覚えたのも事実です。ただ、最初からやりたいことを主張したところで協力者は得られない。遅くとも1年後くらいに必ず結果を出して、そこで初めて正面からやりたいことを主張しようと決めていました」

そして2年目からは、主に全社的なプロジェクトに参画。

望月 「入社時点でも弥生のビジネスは成長していましたが、より成長を目指すために顧客満足度をどのように上げていくのか、といった部分が頭打ちになっていたんです。
それを解決するため、事業者・会計事務所の課題分析と弥生の方針を策定する全社プロジェクトに名指しで抜てきしてもらって。ようやく仕事に手応えを感じましたね」

こうして望月は、目標としていたビジネスオーガナイザーとしての立ち位置に近づき始めたのです。


mochizuki_2017_弥生入社後

事業全般にまつわる“3本の柱”を支えるチームリーダーへ

その後、会計全般の業務を統括し、現在では各プロダクト戦略を立案・マネジメントとするチームのリーダーを担うようになった望月。中期戦略策定、製品サービス企画、環境市場分析の3本の柱を指揮しています。

望月 「中期戦略策定に関しては、具体的にどういったプロダクトをつくるのか、もしくは他社とアライアンスを組んで、どんな風にビジネスをつくっていくのかという事業戦略に近いところまで進んでいます。
これまでの弥生はあくまで“業務ソフトウェアメーカー”として、業務の効率化を武器にマーケットと戦ってきましたが、今私たちが描いているのは『事業コンシェルジュ』というビジョンです」

弥生が新しく目指すのが、業務効率化だけではなく経営をはじめとする事業の指標化、課題そのものを解決する手段の提供です。自社プロダクトでできる範囲と外部パートナーと組んで取り組む範囲、それぞれのポートフォリオを描く段階にきているとチームリーダーの望月は言います。

望月 「コンサルティングファーム時代も、中期策定プロジェクトは何回か経験しているんです。ただ、計画をつくった後はコンサル部隊は去らなくてはなりませんでした。
後から『プロジェクトはこんな感じで動いているよ』と人づてに聞くこともあり、いつも羨ましく感じていました。今は自分で策定したプロジェクトをそのまま実行、統括できることが非常に楽しいと感じています」

二つめの製品サービス企画では、打ち出したいプロダクト、プライシング、プロモーションの更新などにおける年間のマーケティング戦略を立てています。同時に、会計事務所や量販店、ウェブなど、さまざまな販売チャネルの構成も重要な戦略の一つです。

望月 「プロダクトに関しては、開発本部のリーダーたちと細かい議論を繰り返して、いわゆる要求要件定義と呼ばれる現場工程に近いところを担当しています。
新しいサービスを展開するにあたり、『このターゲットをセグメントにこういった価値が届けられます』といったコンセプトや訴求メッセージの打ち出し方まで、チームで設計しますね」

エンドユーザーから会計事務所まで、あらゆるユーザーや使用環境を想定した上で今後いかに機能改善を行えるのか。望月自身が営業に同行し、ヒアリングを行うこともあると言う。

そして三つめの環境市場分析では、直近数年以内に起こるであろう情勢の変化、短期の法令改正の方向、AIを始めとするテクノロジーの変化などについて分析を行います。同時にベンチマークしている競合の分析・そのリスクに対する対策も、チームにとって重要な業務となっています。

大事なのは平均点の引き上げではなく、個人の長所を伸ばすマネジメント

戦略、企画、リサーチなど、広範囲にわたるファンクションを持つ望月のチーム。一見それぞれが異なる動きをするように見えますが、実は切り離すことのできない業務だと望月は話します。

望月 「戦略から環境の予見を察知することもありますし、逆に環境分析の結果から戦略に落とし込み、それがあって初めてプロダクト企画ができるということもある。そういう点で、このチームのメンバーには、横断的に物事を実践できる人間が多いと感じます」

下は24歳から上は58歳と、13人いるメンバーの年齢層は幅広い構成になっています。しかし望月は、“ちょうどいい”ミドルエイジがもう少し必要かもしれないと考えています。

望月 「仕事をする上で年齢を気にするということはありません。一方、年齢と環境がつくり出す行動特性についてはとても関心があります。
たとえば同じ40歳といっても、ベンチャーを渡り歩いてきた人間と大企業一本でやってきた人間では、仕事に対するプロセスやスタイルがまったく違う。前者は柔軟性やスピード感に長けているのに対して、後者は自分のスタイルを柔軟に変えていくことが難しい傾向にあります」

年齢そのものというより、大事なのは物事に対する柔軟性。いかに主体的選択をしてきたか、自分のスタイルを変えられる環境に身を置いてきたかということもまた、望月にとっては重要なのです。

望月 「たとえば企業とアライアンスを組むというシーンでは、どうしても綺麗なものだけを見ていられない。契約締結にいたるまでには、ある程度“寝技”みたいなものが使える経験値が必要だったりもする。
柔軟性と経験値、そのどちらも取れるちょうどいい年齢のメンバーというのがチームには必要だと感じることがありますね。もちろん、キャリアがあってしなやかに仕事をしているメンバーもいます」

リーダーである望月が、人材育成をする上でもっとも重要視しているのが、メンバーの得意分野をひたすら伸ばしていくことです。コンサルティングファームであれば、ひとりでなんでもこなす必要があるため、ある程度欠点を減らしていく必要があります。しかし弥生という会社の規模をまだまだ大きくしていくというフェーズにおいては、平均点の高い人材を増やすより、突出した長所のある人間を育てることが、戦略に深みを出すための得策だと望月は考えています。

望月 「私のチームを例に挙げれば、戦略の策定に特化する人、ひたすら国税庁の条文を読んで製品への影響を把握して落とし込む人、技術動向のマーケットを見る人など、それぞれの役割に特化したメンバーが活躍しています。
戦略や分析が苦手でも、決まった方針を形に落とし込んでいくことに長けた人材もいる。横串ですべて見られることも大切ですが、適性を見極め3つの領域でうまくバランスを取りながら、チームとして最大限のパフォーマンスを出せるようなマネジメントを行っています」

一方、個人的なビジョンとして、もう一度自分の事業を立ち上げてみたいと望月は語ります。

望月 「ゆくゆくはもう一度、自分でビジネスを始めてみたいという野望はあります。それをかなえるためにも、今は弥生を業務ソフトから経営パートナーに昇格させ、顧客の事業のお手伝いができるような世界観をつくっていきたい。それこそが、今の私と弥生という組織のマッチするビジョンだからです」

今年41歳を迎える望月。ビジネスオーガナイザーとして日々奮闘しながら、自分の夢を追うことも決して諦めません。

※この記事は2020年8月に他媒体に掲載したものの転載です。

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