「変わる弥生、変わらない信念」新社長が語る、弥生のこれから
40年以上の歴史を持つ弥生に、2024年10月、新社長として武藤健一郎が就任しました。
武藤のキャリアは、アンダーセン(現:アクセンチュア)でのエンジニアとしてのスタートから、マッキンゼーやスタートアップでの活躍、さらにはGoogleでは執行役員として広告事業責任者を担うという、多彩なものです。常に「次のステップ」を求めてきた武藤にとって、弥生はどんな可能性を秘めた場所なのでしょうか?
武藤は就任以降、社内では「ケニー」の愛称で親しまれています。今回のインタビューでは、彼のリーダーシップのもと、弥生がどのように成長していくのか、その想いについて聞きました。
AIで中小企業支援に挑む、次のステージへ
─ 弥生にジョインしたきっかけと理由を教えてください。
きっかけは、前職で10年の節目を迎えるにあたり、次のステージを考えていたタイミングで声をかけてもらったことです。
その時、2つのテーマを持っていました。一つ目は、スモールビジネスや中小企業のお手伝いを、Googleに引き続き担いたいということ。二つ目は、AIを活用して世の中に貢献したいということでした。AI分野はこれからもっと世の中に必要になると考えていて、それは私自身にとっても挑戦だと考えていました。
ただ、声をかけてもらった当初は、弥生がAIのフィールドとどうつながるのかが、すぐには想像できませんでした。その後、対話を重ねるうちに、会計を始めとしたバックオフィスの分野とAIは相性がよいのではないかと考えるとともに、これは自分がやるべき挑戦だと思うようになりました。とくに中小企業は限られたリソースの中で、競争しなければいけません。AIはその助けとなると確信し、弥生での仕事に大きな魅力を感じました。
ーGoogle 在籍時からAIによる中小企業支援の重要性を感じていたのでしょうか?
Googleでの経験から中小企業にAIを導入することの重要性はよく理解していました。例えば、広告のキーワード選定でも、AIによる自動選定機能を利用の有無で、結果は大きく変わります。
特に新型コロナ禍以降、デジタルデバイド(IT技術を活用できる人とできない人の間に発生する経済格差)が拡大しているのを感じていました。
大企業ではリソースが豊富でAIを自前で開発できますが、中小企業は人材や技術、資金が限られており、その差がどんどん広がってしまう。そこに危機感を覚えました。デジタルデバイドが進む中で、中小企業が価値を発揮し続けるには、デジタルツールの活用が不可欠です。弥生のAIを活用したサービスを通じてその格差を埋めたいと思っています。
信頼関係とデータの蓄積が弥生の力
─ ケニーさんが思う、弥生の強みや魅力は何だと思いますか?
弥生の一番の強みは、お客さまやパートナーとの信頼関係です。
まず、我々がこれから活用しようとしているAIという観点からは、中小企業のお客さまを長年ご支援してきた結果、多種多様なデータを持っていることが大きな強みになります。これだけ豊富な業種のデータが集まる会社は、他には中々ないと思います。
加えて、会計事務所やビジネスパートナーの皆さまと長く積み上げてきたパートナーシップは、単なる利害関係に留まらない信頼関係が結ばれている証です。これは本当に素晴らしいことで、弥生の強みです。
社内に目を向けると、弥生のメンバーはお客さまと同じ目線で考えられる人が多いです。その理由を私なりに考えると、弥生には20年以上勤めているベテランと入社数年の新しいメンバーがバランスよく活躍しており、この多様性が大きなアドバンテージです。
例えばある年代しかいない会社では、多様なお客さまの気持ちを理解することは難しいでしょう。お客さまと同じ目線で考えられる社員が多いことは、中小企業支援において特に重要です。多様性のあるチームが、さまざまな視点から顧客のニーズを捉えられること。それが弥生の強みです。
─ 社長就任にあたって、最初に取り組みたいと考えていることはありますか?
取り組みたいことはいくつかあります。
1つは、社員一人一人がもっと「成長」を意識する空気づくりです。成長意欲やスピードには個人個人の差があります。それを大前提として、個人がまず少しずつでも成長することが大事です。そして、個人が成長することにより、集合体である企業(弥生)が成長すると考えています。
2つ目は、心理的安全性の高い組織づくりです。自分の意見が安心して伝えられることは、チームでの活動、プロジェクトを進める上で重要なことだとGoogleでの経験を通じても強く感じています。弥生にはすでにそういう土台があると思うので、今後もより重視していきたいです。
最後に、社内の意思決定プロセスの迅速化です。
変化のスピードがますます速くなる中で、決断の遅れは競争力の低下につながります。 皆がもっと自分の責任範囲で動けるように、仕組みやマインドセットを改善したいですね。
そして、前任の前山さんが作ってくれた「挑戦」する文化を継続することも重要です。リスクを恐れず、学びを得て、次に生かしていく姿勢が大切だと考えています。
共に成長し、成功を分かち合うリーダーを目指して
─ 今後の弥生の方向性について、どのように考えていらっしゃいますか?
弥生は、今までも、そして、これからも中小企業を支えていきます。私たちのサービスをさらに多くの事業者に届けるためには、弥生自身の成長が不可欠です。
具体的には今の弥生を2倍、3倍に拡大させ、中小企業支援を強化して、経済への貢献も目指します。経済を動かすには当然規模が必要で、それを達成できる仕組みをきちんと考えなければなりません。
それも単純に人数を倍にすればいいわけではなく、個人個人が新しいこと、今と違うことをできるようになる必要があります。より効率化と生産性向上を進めることで、多くの事業者をサポートできるようになるのです。成長は個々の社員の努力の積み重ねでもあるため、全員が成長することが重要です。
─ 社内外に向けて、どのようなリーダーシップを発揮していきたいとお考えですか?
私は、一人ですべてをこなすリーダーではなく、共に成長し、成功を分かち合うリーダーを目指しています。
弥生のミッションを達成するためには、いろんな会社と共に競争し、共創することが重要だと考えています。中小企業やパートナーとも協力し、一緒に成長していきたいですね。
お客さまと直接話すことも大事にしていきたいです。実際に私の身近には、弥生ユーザーのお寿司屋さんやマッサージ店など、リアルな声を聞ける場所があるんです。こういった方々とお話しすることで課題を得ていきたいと思います。
社内では、自分自身が積極的に動き、自ら行動を起こすリーダーシップを発揮したいと思います。さらに、自分の役割や権限を含めて、必要なものを開放し、組織全体がスムーズに動けるようサポートしていきたいですね。
お客さまと共に進化し、未来を切り開くパートナーに
─ 最後に、弥生のお客さまやパートナーに向けたメッセージをお願いします。
弥生はこれから大きく進化します。
しかし、私たちが大切にしているエッセンスは変わりません。それは、お客さま目線であり、中小企業に寄り添う姿勢です。私たちは一緒に歩んでいくパートナーであり続けたいと思っています。
さらに、お客さまやパートナーにも、進化する弥生と共に歩んでもらえると嬉しいです。
そして、まだ弥生のお客さまでない方々へもメッセージをお伝えしたいです。デジタルツールを使うかどうかを判断する余裕はもうないと思っています。ただし、遅いからといって諦める必要はありません。私たちはどの年代、どの業界、どの職業の方でも活用できるサービスを提供していますので、ぜひ挑戦してみてください。私たちと共に新たな可能性を広げていきましょう。
編集後記
インタビュー中はチャーミングな笑顔が印象的で、ケニーさんの新社長としての熱意や思いが伝わってきました!
裏話として、トライアスロンを趣味としている武藤さんですが、月に1,000km以上もトレーニングをするライフスタイルには驚かされました。体を動かすことでリフレッシュし、オンとオフの切り替えを作ることが、仕事も集中するコツだそう。
これからの弥生がどんな変化を遂げるのか、私たちの挑戦にご期待ください。「変わる弥生、変わらない信念」という言葉が、どのように形になっていくのか、ぜひ見守っていただけると嬉しいです。