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それはオーケストラのように──カスタマーサクセスチームの立ち上げ

2018年、弥生のクラウド確定申告ソフトを対象に、カスタマーサクセスチームが誕生しました。リリース以来、ユーザー数を順調に伸ばし、業績も好調の中で立ち上げられた背景から、現在に至るまでのストーリーをチームに携わったメンバーたちの言葉を織り込みながらご紹介します。


部署の垣根を越えた「カスタマーサクセスチーム」の立ち上げ

弥生では、お客様の多様なニーズに応えながら、確定申告作業をよりスムーズに、かんたんにサポートするために、2014年1月より「やよいの白色申告 オンライン」、10月より「やよいの青色申告 オンライン」の提供を始めました。

はじめは、お客様に受け入れてもらえるかどうか不安もありましたが、嬉しいことにユーザー数は順調に伸びていきました。サービス開始から4年が経った2018年には、ユーザー数はリリース当初の13倍にも増えていました。

ユーザー数の増加に伴い、オンラインサービスに携わるメンバーの数も増え、分業化が進んでいきます。マーケティング部の山下は、拡大していくサービスとチームを俯瞰して捉え、先を見据えた課題感を持っていました。

山下 「私たちは『スモールビジネスの事業コンシェルジュになる』という会社全体のビジョン、『すべての個人事業主にスムーズな確定申告を』というクラウド確定申告ソフトとしてのビジョンを共有していたので、チーム全体として大きな考え方のズレなどは生じていませんでした。
一方で、開発、マーケティング、カスタマーサポートは、それぞれ、組織上異なる部署が担っており、さらに部署内でも細かく分業されています。分業化することは一つひとつの専門性を上げる効果がある一方、それが進む過程で大切な“ユーザー目線”が損なわれ、部分最適になってしまわないか……という懸念が少なからずありました」
大きなビジョンは同じくしていても、それぞれ向き合っている業務やKPIが異なれば、部署間でもちょっとした認識のズレが生じることは、珍しくありません。

しかし、お客様にとっては、それぞれの部署がやっていることの違いなどは関係のない話。アプリケーションから、メールやホームページの情報、カスタマーセンターのサポートも全部ひっくるめて、弥生の体験として捉えているものです。

サービスとして成長期にあり、まだ大きな問題が出てきていない今だからこそ、部署の垣根を越えてみんなで“ユーザー目線”になって、あらためて足並みをそろえていこう──このような想いから、2018年の初めに立ち上げられたのが、カスタマーサクセスチームです。


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目線を合わせた率直な議論で、見えてきた多くの発見

カスタマーサクセスチームには、開発、マーケティング、カスタマーサポート、それぞれの部署でクラウド確定申告ソフトに携わるメンバーが集まりました。このチームの取りまとめを務めたマーケティング部の鈴木は、カスタマーサクセスチームの機能を“オーケストラ”に例えて表現しています。

鈴木 「各々が持つプロフェッショナルな技術を、“ユーザー目線≒カスタマーサクセス”という共通の主題の中で調和させることで、大きな感動を伴う体験を生み出していく……そんな領域横断的に多部署が協力し合うカスタマーサクセスチームは、大人数のプロ奏者が息を合わせてひとつのパフォーマンスをつくり上げるオーケストラと似ているなと思い、チームの立ち上げ当初からそう話していました」
しかし、集まったのはそれぞれの仕事と強みに矜持を持つ、個性の強いメンバーたち。部署ごとの都合もある中で、足並みをそろえることはそう簡単ではないのでは……と思いきや。

始めてみれば、課題感の共有や目標設定の議論などが、驚くほどスムーズに、かつ熱量も高く進んでいきました。

山下 「ワークショップ形式で、ユーザーのペルソナづくり、カスタマージャーニー設計などにも取り組んだのですが、普通なら大きな前提部分のすり合わせから始めるため、かなり時間がかかると思うんです。
けれども、やってみたら“ユーザー目線≒カスタマーサクセス”という目線合わせがしっかりできていたからか、基本的な骨子はすぐにできあがって、細部の深い議論が活発に行われました。意見交換の量が膨大で、書き起こしと取りまとめが大変だったのは、いい思い出です(笑)」
“カスタマーサクセスのため”という前提のもと行われたフラットな議論は、参加していた顧客サービス本部の油江や開発本部の飯塚にとっても、大きな気づきを与える契機となったのでした。

油江 「カスタマーサポートのメンバーは、お客様からいろいろな要望をいただいて、改善に努めています。ただ、一方で、ずっとお客様との直接の関わり合いの中にいたからこそ、潜在的なニーズなど見えにくくなっていた部分もあったんだなと、あらためて感じました」

飯塚 「たとえば、マーケティング本部のメンバーから開発本部のエンジニアに『ボタンの位置を少し変えてほしい』とかって、言いづらいと思うんですよね。使った人の率直な感想はとても大切なのですが、相手の専門領域に関わる意見をするのは、気をつかう場合が多いと思います。
カスタマーサクセスチームの話し合いは、“ユーザー目線”という共通認識が徹底されており、普段より思ったことを言い合える環境だったので、それぞれの専門領域を超えて、自由に意見を出し合い、たくさん気づきをもらえる機会でした」


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「肉食ったからには、結果出さないとね」

その後も議論を重ねた上で、カスタマーサクセスチームは「ユーザーの確定申告書の作成完了率」をひとつのKPIとして設定し、その数字を上げるための施策を、各部署が協力しながら展開しました。

その結果、製品のホーム画面をはじめとするUIや、サポートコンテンツを中心に、改善されていきました。

部署を横断して展開されたこのカスタマーサクセスチームの取り組みは、社内的にも大きな注目を集め、2018年10月に社内表彰されました。

鈴木 「正直、まだ改善したものをお客様に使ってもらう前段階だったので、結果が出てないのに期待値だけで賞をもらってしまった状態です。ものすごいプレッシャーを感じながら、もらった賞金で、みんなで焼き肉を食べに行きました。『これ食べちゃったからには、結果を出さないとねぇ』なんて話しながら(笑)。
ただ、結果に関わらず、このような取り組み自体を評価してもらえたのは、とても嬉しかったですね」
山下 「今回はクラウド確定申告ソフトにフォーカスした目標に最適化していましたが、視座を上げて、『スモールビジネスの事業コンシェルジュになる』という全社ビジョンの目線でカスタマーサクセスを考えていくと、弥生が提供しているほかの業務ソフトとの連携も視野に入ってきます。また、現状でも『こうしたらもっといいサービスになりそうだね』というポイントがたくさん見えているので、これからが楽しみです」


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協力し合っていいものづくりをすることは、きっと楽しい

部署の垣根を越えたカスタマーサクセスチームの取り組みは、成長期における会社組織の中で「大切なことは何なのか」をもう一度見つめ直すきっかけを与えてくれています。

私たちが「お客様のためのサービス提供」を仕事にしていること。そして、「いいサービスをみんなで協力しながらお客様に提供していくことは、単純に楽しい」ということ。

飯塚 「他人、とくに他部署のメンバーたちは、自分にない視点や情報を持っています。それと、自分が持っているものを掛け合わせると、自分だけでは気づけなかった発見や改善策が見えてくる。だから、このチームでのやり取りは、とても楽しいものでした」

油江 「以前だと、顧客の声が製品に反映されるまでに時間がかかっていましたが、このチームで話を詰めればすぐに改善策まで落とし込んでいける。そのスピード感が気持ちよかったし、違う視点を持ったメンバーと、同じ目線で話ができることが楽しかったですね」

鈴木 「最初は、いろいろな部署の人が集まって、サービスの根幹に関わることを議論をするなんて、どうなることかとドキドキしていました。でも、ふたを開けてみたら、それぞれ持っている視点は違っても『お客様のため』という意識さえ共有できていれば、こんなにもスムーズに、けれども深く協力し合えるものなのだなと、感動しました。
このプロジェクトを始めたことで、波及的にここ以外でもコミュニケーションが増えているなとも感じられていて、本当にやってみてよかったなと感じています」

カスタマーサクセスチームは、今後も“ユーザー目線”を持ち続けながら、さらなる顧客体験の向上に努めていきます。その過程で、部署の横断はさらに進み、チームの輪はどんどん広がっていくことでしょう。

人が増えれば、それだけ音の厚みも増していきます。1年後、5年後、10年後と、カスタマーサクセスチームが奏でるハーモニーが、ユーザーに大きな感動体験をもたらすことを信じて。

※この記事は2019年4月に他媒体に掲載したものの転載です。

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