育児・介護休業法の改正で改めて聞いてみた「男性社員育休のリアル」
令和4年4月1日から段階的に育児・介護休業法が改正されました。育児の部分でいうと男女とも仕事と育児が両立できることを目指した改正となり、特に注目されるのは「産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)」の創設です。
弥生の男性育児休業(以下:育休)取得率は20%(※)。日本全体の育休取得率13.97%と比較するとわずかに上回り、少しずつではありますが男性社員が育休を取得することが社内の日常として定着しつつあります。
今回、社内の各本部から、育休を取得した社員にヒアリングを行い、育休を取得した感想や、メリット・デメリットなどを聞きました。
男性社員が感じた「育休のリアル」ぜひお読みいただければと思います。
※2021年10月~2022年9月実績
制度として用意されていたので取得した
―育休を取ろうと思ったきっかけは何ですか?
原田:制度として用意されていたので取得しました。
中家:妻が入院中、長女(当時8歳)と長男(当時3歳)の育児が必要になることから、妻が退院するまでの間、育休を取得しようと思いました。
長男に医療ケアが必要なため、どこかに預けることも難しく、自分が対応する必要があったことも取得の理由でした。
上野:妻が産休後に仕事復帰したので、その後取得した流れになります。
またお子さんのいる知り合いのご先輩夫婦に「新生児の成長を近くで見ないと後悔する」と言われていたので、取りたいなという気持ちもきっかけの一つになりました。
鈴木:2つあります。ひとつは、妻の家事・育児のフォロー、妻の息抜き時間をつくるためです。毎回、育児と家事と仕事で疲れている妻のフォローを、前々から考えており、今回二人目の子供(女の子)の誕生を切っ掛けに、私自身が育休を取得し、何か妻のフォローが出来ないかと考えていました。
ふたつめは、人事という仕事柄、「多様性」・「女性の働き方」等をよく考えた結果、自分も取得するべきかと。仕事柄、組織の文化構築、成長発展、個人の働き方等の情報に多く触れており、特に昨今、上記の中で「ダイバシティー(多様性)」が話題です。女性という点で、女性が働き続けるための環境整備、運営は大事であり、また女性の働く上での大変さ(仕事と育児の両立)は分かっていたものの、実際体験してみないと分からないと。
また、「LEAN IN-女性、仕事、リーダーへの意欲」というMETA(旧称Facebook)COO シェリル・サンドバーグ氏の本を読んだことを切っ掛けに、女性の働き方・働く環境をより整備していかなくてはいけないと強く感じました。
育休取得の可能性があることを上司に報告したとき、第一声が「おめでとう」という言葉だった
―育休を取ることに対して、周りの反応はどうでしたか?
原田:社内外問わず肯定的でした。社内では、取ることに対する話よりも育休取得中の引き継ぎをどう進めるかの話にすぐになったことが印象に残っています。
中家:長女、長男は妻がいないことに対して不安がっていたので、喜んでいました。
当時、長女は小学二年生だったので、学校から帰った時に一人で留守番をすることに怯えていましたが、家に自分がいたので安心していました。
会社では、みなさんから温かい言葉をかけていただきました。とてもありがたかったです。
上野:反応としては、妻の妊娠が発覚し安定期に入ってすぐに育休取得の可能性があることを上司に報告しました。第一声が「おめでとう」という言葉でとても嬉しかったのを覚えています。そこから業務の引継ぎを相談しながら、チーム内で割り振りを決められたのでスムースに育休に入れたので、チームの皆さんには本当に感謝しています。
家族の反応としては、実家に報告した際に「男性が育休取れるなんていい会社だね」と言われました。
鈴木:周り(社内、家族)の反応は、良かったと記憶しています。社内では所属部署の戦力が少ない状況にも関わらず、前向きに受け入れてもらいました。社内からの育休に対する理解がない、または感じられない場合は育休を取得することを断念しただろうと思います。家族の反応は、家族の時間も含めて取れるので、妻も子供も良かったと思います。
育休取得前の不安は、仕事、事前手続き、収入など。事前の準備、会社のサポートは重要
―育休を取得する前に不安を感じたことは何ですか。またそれをどのように解決されましたか?
原田:社内の作業に関しては、自分がいなくても回るように常々運用していたので、特に問題無く引き継げました。そのため、特に不安に感じることはありませんでした。
中家:ふたつあります。ひとつは手続きに対する不安です。長男が産まれた際も育休を取得していたこともあり、ある程度は理解していましたが、人事総務部の皆さんが丁寧に教えてくださり、特に困ることなく必要書類の提出ができました。
ふたつめは収入に対する不安です。手続きと同様に人事総務部の皆さんから仕組みなど丁寧に教えていただいたことで、事前に準備をすることができました。
上野:仕事の面では、長期休業後、ちゃんと仕事ができるか心配でした。でも復帰後チームの皆さんから状況説明の機会をいただけて問題なく業務を行うことができました。
育児の面では、基本的に日中はワンオペになるので、失敗が許されない状況をどう乗り切るかでいっぱいいっぱいでした。そんな中、いろいろなんな課題解決の事例が、大手育児系メディアに掲載されていたので、検索して情報収集し臨機応変に対応できました。
鈴木:不安は特段無かったです。業務的に給料、給付金、保険料免除については知識がありましたので、どのように免除されるか、給付金をもらえるか分かっていました。ただこの辺について社内相談を受ける際に不安に思う方は多いようです。
仕事面も期間が短いこともあり、体制変更を求めるレベルではなく、一時的に同じチームの皆さんに穴埋めをしてもらっていました。復帰後も同じ業務を続けていました。
デメリットがないわけではない、一方で家族と向き合う時間が増えることは代えがたいメリット
―育休を取得することで感じた、メリット・デメリットはありますか?
原田:メリットは、家族と向き合う時間が増えて、自然と自分の子供の育児に積極的に参加できるようになったことです。
デメリットは、その間の給付金が67% しか出ないことと、育休申請系の書類のやりとりがちょっと手間だった感じですね。1ヶ月以上の育休では社内のメールアドレスが停止するということだったので、プライベートメールでやりとりしていました。提出する書類が複雑なのと量が多かったので、子供の面倒を見つつ、対応もしないといけないので大変でした。
中家:メリットは家事、育児に対して主体的に取り組めるようになる点です。妻と家事について話す時間が増え、家事に対して共感することがとても多くなりました。
デメリットはやはり仕事に影響が出てしまう点です。
上野:メリットとしては、子供と1日触れ合えて成長を見届けられる点だと思います。とくに4~6か月の間は、夜泣きも少なく安定してくるので、毎日可愛さに癒されていました。
デメリットは特に感じたことないです。仕事の復帰もスムースにできましたし、育児も充実していましたので。
鈴木:私の感覚では、デメリットは一切ありません。メリットしかありません。育休の取得は人生で何度もありません。育児は大変ではありますが、その貴重な機会で感じたこと、経験したことにより、妻や世の中のお母さんの立場で考えるように少しはなりました。家族では子供との距離も、パートナーとの距離もずっと近くなりました。そして、私は働き方の価値観は大きく変わりました。当たり前かもしれませんが、家族との時間、家族の幸せが第一となりました。
家事も育児も育休を取ったら出来るようになるではないので、普段から取り組んでいることが大事
―育休取得前にこれをやっておけば良かった…ということはありましたか?
原田:特に無かったです。
中家:"やっておけば良かった…ではなく、実際にやっておいて良かったと思ったことです。
①幼稚園に持っていくリスト(曜日別)の作成
曜日ごとに持っていくものが違うため、なにをもっていくかを写真付きのリストにしておきました。写真付きなので間違うこともなく、子供も手伝ってくれて非常に良かったです。
②さみしい時は泣いても良いルールの設定
さみしい時は泣くとすっきりするので、泣くのは我慢しなくても良いというルールにしました。おかげで、寝る前などにさみしさが募って泣きはするものの、「すっきりした」と言って割とすぐに泣き止んでいました。
③ご飯に対する期待値のすりあわせ
妻と同じ水準のご飯は期待してはいけないと事前に子供たちとすり合わせを行い、妻が作らないメニューになることを宣言していたので、「ママのほうが美味しい」や、「ママのご飯が良かった」などという批評を受けずに済みました。
やっておけば良かった…については、家事も育児も育休を取ったら出来るようになるではないので、普段から家事や育児に取り組んでいることが大事だと思います。物がどこにあるか、何をしなければいけないかなど、子供を産む直前に夫にレクチャーするのは、とても大変だと思います。"
上野:貯金だと思います。育児休業給付金が支給されるとはいえ、収入が減るからです。
鈴木:特段やっておけば良かったことはありません。もしかしたら、普段家事や育児に関わる時間がない場合は、事前に家事や育児の進め方(どこに何がある、どのように進める等)を確認しておくと、実践の際はスムーズかと思います。
復帰後、1週間は引継ぎのレクチャーMTGや溜まっているメールを読む時間を設けてもらった
―育休から復帰する上で不安なことはありましたか?またそれをどのように解決されましたか?
原田:自分の仕事があるか不安でしたが、そこは上長や周りの同僚と話しつつ、仕事を生み出していきました。
中家:妻の退院と併せて仕事に復帰したので、妻が退院してすぐに二人の子供と産まれたての赤ん坊の世話ができるのか不安でした。
仕事に復帰しても、なるべく帰宅時間は早くして家事育児を行い、朝も早く起きて家事をするなどして妻と協力しあうことで解決しました。
育休前に仕事は引き継ぎしていたので、特に不安に感じることはありませんでした。
上野:やっぱり3か月もの間、一切業務を行っていなかったので、業務を行えるかが一番の心配でした。復帰後、1週間は引継ぎのレクチャーMTGや溜まっているメールを読む時間を設けてもらったため、徐々に慣れることができました。
あと息子としかほとんどコミュニケーションを取っていなかったため、まともにビジネスに関する会話ができるか不安でしたが、息子をあやす時に元気よく対応していたことから、チームの皆さんとも明るく話すことが出来たので、心配不要でした(笑)
鈴木:期間も短い影響もあり、不安はありませんでした。
知っていることと、実際に体験することは違う。男性が家事や育児を主体的に行えるように変化していく大きなきっかけ
―育児・介護休業法が改正され、産後パパ育休の創設や、育児休業を取得しやすい環境整備の義務化などの変更がおこなわれました。このことについて、どのような感想をもちましたか?
原田:育休にはメリット・デメリットがあるので、その辺りがきちんと整備されていること、社内に認識されていることが必要かなと思います。
あとは、プロジェクトの属人化をなるべく減らして、育休を取りたい人が取れるようになれば良いなと思います。
中家:知っていることと、実際に体験することは違うので、男性が家事や育児を主体的に行えるように変化していく大きなきっかけになると思っています。ただ、制度を機能させるには、周囲の協力や取得による不利益を最小化するなど工夫も必要だと思います。また、育児を行うことだけが厚遇されるのではなく、社会的な平等をどのように実現するかも大事だと感じています。
上野:私が育休を取得した時に、3か月検診へに私と息子と二人で行きました。その時に会場は女性ばかりで、男性が少なかったことを覚えています。育児は私一人では、絶対にできないな思いますし、女性も男性も関係なく育児に関わることができると、世の中がちょっとは明るくなると思うので、ぜひ推進してほしいと思います。
鈴木:国の環境整備は進んできている一方、まだまだ改善はあると思います。育休を取得する際の不安な面は、お金の面もあるかと思いますが、一番のポイントは「職場理解」だと思います。あるアンケート(※)でも「男性育休を取得しなかった理由1位は「職場の理解がなかった」」と書かれています。
職場理解のポイントは、「同じような体験をしているかどうか」だと思います。大変さ、育休の意義を理解してくれれば、相手の立場で考えられ、積極的にもフォローすることも出来るのではないかと思います。そのための一番の近道だと思うのが、育休の取得者を増やすこと。そのためにも男性の育休は義務にするレベルにすることも必要と感じます。極端な言い方かもしれませんが、女性は出産の際は仕事を休まなければなりませんが、男性はそうではありません。女性の出産を、夫である男性は必ずフォローすること。フォローできない特別な事情がある場合は育休を取得しないことも認めるが、基本取得を義務化する方向が良いと思います。年休5日間取得義務と同様に、育休義務化の方向は、少子化対策や企業力向上の点も踏まえて、良い施策ではないかと個人的には考えています。
※:株式会社エバーセンス「男性育休に関するアンケート」(2021年6月25日)より引用
<編集部後記>
ヒアリングを行って感じたのは、育休取得に対して、様々な考えがあったのだなということです。新しい制度はまだ始まったばかり、メリットだけではなく、デメリットもご報告することで、より使いやすい制度になっていく一歩になるといいなと思います。
育児をするということは、男性も女性も得難い経験だと思います。色々な課題はありますが、家族とじっくり向き合える育休の取得を、弥生は今後も応援し推進していきます。